江川 寺内 小石原川ダム 見学 その4


本日、最後の見学場所、小石原川ダムに到着しました。

「こいしわらがわにあるこいしわらがわだむですよ」
と、九州のダムファン皆様からいつもご指摘を受けますが
そもそも…長いから小石としか呼んでなくって…すいません。


ということで、堤高で一ツ瀬ダムを超えて九州最大の139.0mの小石原川ダムです。

めっちゃきれいなリップラップ♪

下流面勾配は1:1.9で上流側は1:2.4です。


天端も凄く広々。二車線+歩道という充実っぷり。


ちょっと残念なのは長い系のダム湖名。令和あさくら湖。

川上ダムも あおやま川上湖で長い系。

なんで一庫ダムの知明湖とか
富郷ダムの法皇湖とか
日吉ダムの天若湖とか
ぴしっとカッコよく漢字二文字で名づけるムーブが最近敬遠されているのか謎。

早明浦のさめうら湖はカッコよさと別に難読だから平仮名という発想かもですが。
全国ニュースによく出るせいで難読地名になっていないけど。


堤頂長は558.3mです。長ーい。


リップラップの石が凄く綺麗で庭石に使えるクラスだという情報を聞いていたので
足元を見ると確かにすごくきれいな縞々模様の岩でこれは美しいなと吃驚していました。


管理所は珍しくこんな色の壁でした。
この色は何を表しているのかなー。


ちょっとだけ監査廊にも入れて頂いちゃいました。


定礎石撮影♪


直下にも行きました。


試験湛水の時のここからのカスケード放流は本当に綺麗で感動的でした。
国内最長のカスケード式洪水吐です。
何段あるのかなぁ♪

と、ふわっと頭に浮かんだことを質問したら
端っこは高さ調整ですりつけしているのでカウントしないとすると
一段の高さが2.5mで47段では、という答えが。
ありがとうございます。


堤体の重力部というかコンクリート部のフーチングの段
とカスケードの段は同じ高さで作った方が施工性がいいです
というお話を聞いていたのでズームした確認したところ
確かにそろっているように見えました。


選択取水設備から来ているお水はここから出てきて江川ダムダム湖に入ります。


天端に戻ってきて右岸にあるカスケード式洪水吐を真上から見ました。


常用洪水吐ゲートレスオリフィスと
非常用洪水吐越流堤です。


洪水吐越流部は右岸側の地山の上に乗っかっています。
奥にあるのは雨にかすんでぼんやりとしか見えませんが
選択取水設備です。


この非常用洪水吐の越流堤が踏ん張ってくれたのが
令和5年7月8日〜10日にかけて居座った
線状降水帯を伴う前線性降による大雨でした。

日本ダムアワード2023で線状降水帯と戦った小石原川ダムは
洪水調節賞にノミネートされていました。


7月10日10:00の段階のアメダス24時間雨量です。
画像中央の朝倉観測地点で312.5mm/24Hです。
南の耳納山観測地点は376.5mm/24H
英彦山観測地点は412.0mm/24H
筑後川の上に線状降水帯が乗っかっていました。


寺内ダムへの流入量が凄まじくなった頃のナウキャストです。
真っ赤を超えて紫色の雨雲の塊が筑後川の上に居座っていました。
小石原川ダムだけでなく、隣の寺内ダムにも大変な水が来ていました。


川の防災情報で筑後川の流域に黒のマークがいくつも出現しました。
氾濫が発生した箇所がいくつもあったのです。


7月10日08:50

寺内ダムは急激な流入量増加で異常洪水時防災操作への移行を考慮して
いわゆる“緊急放流”の通知を行いました。

この通知では7月10日09:50頃から異常洪水時防災操作の放流を開始する計画であるとなっています。

こういう通知を受けたときにダム操作を全く勉強していない報道機関は
ちょろちょろ流していた蛇口をいきなり全開にするように
放流量が増えると思っている人がまだいるように思います。

異常洪水時防災操作はダムに入ってくる水とダムから出す水を同じ量にする操作です。

いきなり同じにするのではなく、洪水の時に定められたゲート放流量を上回る量を
少しずつ増やす形で出していき、入ってくる量と同じになるようにゆっくりと合わせていきます。

それには時間を要するので、多くのダムではおおよそ三時間前には通達をしています。
これは下流域に暮らす人にとっては避難に充てることができる時間にもなります。


川の防災情報で追いかけていた寺内ダムのハイドログラフトハイエトグラフになります。

上にある下向き棒グラフがハイエトグラフで降雨量を示しています。
下のグラフがハイドログラフでダム湖貯水位(水色の棒グラフ)と
ダム湖への流入量(青色)、ダムからの放流量(緑色)を示しています。

下のハイドログラフで紫の点々のラインが異常洪水時防災操作開始判断水位です。
ダム貯水位は紫のラインを超過しています。

異常洪水時防災操作の通知があった後に、一定の量の放流が
じりじりと放流量を増やしていることが見てとれます。


川防のグラフがちょっと小さすぎて見づらいので
「川防見るやつ」の10分刻みの大きめグラフで見てみます。

放流量は赤い線です。
ずっとまっすぐに一定量で放流していましたが09:50頃から少しずつ放流量を増やしています。

しかし、上のハイエトグラフを見ると
ほぼ同じころに雨がやんできていました。
そのため、急激にダムヘの流入量(緑の線)が減り始めます。

これを管理所の放流師の方はきっちり見極めています。

雨の降り方を見て流入量と放流量を同じにするちょっと手前で踏みとどまって
ぎりぎりのところで貯水位の上昇を抑え続けてくれたのです。

異常洪水時防災操作で放流量を増やしていきましたが
ダム湖貯水位をこれ以上、上げないでぴたりと抑え込んだのです。

そしてなんと、このまま、流入量=放流量に移行せずに乗り切ってくれたのです。
予測不能の線状降水帯の雨を見極めて乗り切ってくれたのです。
寺内ダム、素晴らしいっ!!!


これは雨が収まった後に、下流河川の水位を見ながら安全な範囲で
貯水位低下のために実施されている後期放流時のデータです。
洪水の時にダムにためて大丈夫な、洪水時最高水位まで10cmです。

波浪で最高水位まで達してしまいそうな状況にもかかわらず
この時も流入量より放流量を少なくしています。

結果
下流の金丸橋地点で河川水位を約1.38mも下げることに成功しました。
素晴らしい!!

この雨の時の流入量は寺内ダムの計画洪水波形(昭和28年6月出水)の
1.8倍にも達していました。

でも…1000年に一度級の平成29年7月九州北部豪雨の時は
計画洪水波形の3倍近い水が来ているので…。

過去にとんでもない記録があると相当凄い記録的な雨でも
そうだと感じられない感覚の鈍化は怖いなと思います。
この前線と線状降水帯による寺内ダムの既往2位の流入量だったのです。

山の向こうで寺内ダムが死に物狂いで頑張っているとき、小石原川ダムも頑張っていました。
江川ダムはいいんです。
利水頑張ってもらわないといけないので。


川の防災情報の小石原川ダムのハイドログラフとダム模式図です。

寺内ダムよりずっと大きな小石原川ダムの貯水池ですが
ゲートで戦う寺内ダムと違って小石原川ダムはゲートレスです。

ダムにお任せ
頼んだぞ!! 小石原川ダム!!
という状態。


しかし、ライブカメラで恐ろしい画が確認されていました。

何…この水位…

マジで
マジでやばくないかこれ…


非常用洪水吐越流頂までぎりっぎり!!!

これ…ホントに大丈夫なの??

と、ハラハラしたのですが大丈夫でした。


時間雨量40mm級が何度もやってきて緑の線で示されている流入量が
ピークを作りますが、そのたびに赤い線で示される放流量がゆったりと増えるだけ。
ゲートレスのすばらしさを教えてくれる見事なハイドログラフです。

これを延々と続く前線と線状降水帯の雨のもとで展開し
最終的に、非常用洪水吐越流頂高まで、後、61cmというため込みをしてくれたのです。

ダムが一人でこれをしてくれたのです。
ゲートレスダム凄い。素晴らしい。

更に詳しく知りたいという方は
水資源機構 筑後川上流総合管理所のHPで
朝倉3ダム 洪水調節などの状況(速報)
【R5.7.8〜7.10 線状降水帯を伴う前線性の降雨】

https://www.water.go.jp/chikugo/chikujyo/flood/r05-report_0710flood.pdf
をご覧ください。

ダムの効果の素晴らしさはもちろんですが
最後に今回確認された線状降水帯のエピソードがひとつ掲載されています。

こんなに近い位置にあるダムで
線状降水帯の真下にあったにもかかわらず
寺内ダムと小石原川ダムの降雨強度が同じ時間にピークを作っていないという
なんとも不思議なことがあったのは気象を勉強する人でなくても
興味深いのではないかと思います。


九州で一番高いダム
小石原川ダムは、周辺整備が素晴らしく
二輪の交通公園やロードバイクのトレールコース整備などで人気の場所になっており
防災操作よりも地域に愛されるダムとして有名になりつつあります。

地域の人に愛されるダムであること。
それは地域に人にダムのお仕事をわかってもらうための確かな架け橋になると思います。

お天気は良くありませんでしたが愛されているダムだという事を
しっかりと感じることができた朝倉3ダム江・寺・小石見学でした。

ご案内を頂きました筑後川上流総合管理所の皆様、ありがとうございました。