荒瀬ダム 見学 その3


天端を歩くと真横に巨大なゲートを見ることができます。
本当に巨大なゲートです。


右岸にある管理所も今は人の姿もなく扉は閉ざされていました。


じっとダムを見ていると対岸に役所の人と議員らしい一団がやってきました。
こんにちはと声をかけましたが目線一つあわさずに無視されました。
その後も車が通るのに天端をうろうろしていて危ないので
車が来ていますと声をかけたりしましたが返事はありませんでした。


腫れ物に触るように
口にする時に注意するように
ひそひそと会話をするその様子に
何とも気分が悪かったです。

このダムを見て何を話していたのでしょうか。

このダムは国内で初めて撤去することが決まったダムです。

その仕事を全うするための機能を欠いたわけではなく
もう仕事しなくていいと言われたのです。


左岸の親柱に設計者の名前が刻まれていました。

みんなの暮らしを良くしようと
電気を安定供給しようと
1955年に竣工した県が作ったダムでした。

電気が確実に電力会社の力で供給されるようになり
近年は県で運営しているダムが次々と電力会社に払い下げになっています。
水力発電は管理が大変だから
水力発電はメンテナンスが大変だから
買った方が安くつくようになったから

そしていらないと言われたダムが出てきてしまいました。


撤去した後も橋は必要だから別に橋をかけてくれという地元の声があると聞きました。

それならば
この堅固なゲートピアをそのまま橋として使うという事は出来ないのでしょうか。

答えは返らぬとわかっていて
それでも
現場で何度もコンクリートに問いかけました

 もう疲れたからここに在りたくはないですか

 ダムとして役目を終えても
 この身朽ちるまで
 この場所に暮らす人の為
 橋として生まれ変わって人の役に立ちたいと思っていますか と

私には
まだ頑張れるから
もし生きていいなら
ここに居させてくださいと

そんな声が聞こえたような気がしました。