番外編 安治川大水門 その1
2004/3/4 記
大阪は水の都。
阪神高速環状線の西側には暗い大阪湾と湾岸道路のライトばかり。
ガントリークレーンのシルエット。
24時間働き続ける工場の煙。
時折あがるフレアスタック。
此花区。
横たわる大河は渡し舟が行きかう安治川。
船舶航行の為に今も低い橋がなくて渡し舟のある場所。
川の上を横断するのは鉄道と、はるか高みの高速道路の橋脚ばかり。
かつて港湾労働者が集まっていた町。
今は夜に人通りはあまりにもまばらで活気は消えうせている。
ちゃぷちゃぷと
堤防に寄せる波音は潮の香りではなく油の香り。
海が近いことをちっとも知らせてはくれない。
道路を歩いているのは自分ひとり。
猫の子一匹姿を見ない。
横に並ぶのはタイヤをなくし、窓ガラスを割られた廃車ばかり。
誰が歩くにも物騒。
声をあげたところで駆けつけてくれる人は居ない。
巡回しているパトカー一台では到底守りきれない治安。
物好きしかこんな時間に訪れるものは居ない。
そんな中にそびえる鋼鉄の壁。
闇の中、その全容はつかみきれない。
一体、これは何なんだ?