牧山浄水場跡地

2025/5/11 更新

数年前に文献を調べていた時に
偶然発見した牧山貯水池決壊事故について
北九州に行くことが在ったら現地調査をしようと
頭の片隅にずっと置いてありました。


こちらがその事故についての記載がある工学会誌です。
1915年。


貯水池の下にあった旭硝子様の敷地に
貯水池の水が押し寄せて大変なことになったみたいです。

令和7年1月に佐世保市で開催された
「ダム工学会 水道ダム交流講演会」で
北九州市上下水道局の方に御挨拶する機会があり
当日はドタバタしていたので後日、改めて
牧山貯水池決壊事故についてお聞きしたところ
大変詳しい資料を見せて頂くことができました。


牧山と名前がついている地区のどこに貯水池があったのか
地形から東の方かなと思っていたのですが
なんと旭硝子様の社有地のすぐ北側の山の上に
貯水池があったとのこと。


こちらが頂いた資料の一部です。
洞海湾を挟んで若松区が見える山の上。

牧山浄水場と貯水池は現在は廃止され、
跡地は公園やグラウンドになっているのだそうです。
この写真で浄水場とその隣にあったという貯水池の位置確定。

令和6年年度末
北九州市の水道用・工業用水用ダムを見学するために小倉入りして
ダムマイスター仲間の北九州のダム好き様にご案内を頂きました。


牧山の貯水池後に向かう前に立ち寄っていただいたゾンコラン坂のてっぺんです。

河内貯水池から八幡製鉄所に水を送る河内導水路にある
水路分岐の施設「停塵槽」がこの場あたりなのだろうという事は
古い国土地理院の航空写真で予測が付きました。


その場所が山のピークにあるのですが
ピークから洞海湾側に下っていくと視界が開けます。


洞海湾の向こうの若松区と若渡大橋と牧山浄水場があった
山が見えています。


今から向かっていただく都島公園がこの山になります。


標高は76mくらい。


枝光橋も見えました。
これはまた近くでしっかり見なくては。

牧山浄水場があった都島展望公園・都島球場・多目的グラウンド
まで移動です。


助手席に積載して頂いたので車内から写真撮り放題。


決壊事故で大変な被害があった旭硝子様の社有地と貯水池のあった山です。


山の上、凄い道を上って到着しました都島展望公園。
浄水場跡地は少し洞海湾側に下ったところです。


グラウンドの敷地の端にあるという水道記念碑を見に行きます。


こちらの記念碑の説明板には決壊事故についての記載はありませんでした。


地図では都島球場と名前が確認できるこの場所が
決壊した貯水池の跡地のようです。
気配は全く残っていません。


若松区にある菖蒲谷貯水池の説明板には決壊事故について
少しだけ触れられています。

貯水池の決壊事故への対応はもちろんしなくてはなりませんが
水需要にこたえるために新規水源の確保も急務でした。

その時に造られたのが菖蒲谷貯水池なので経緯に触れられているのかと思います。


図書館で牧山貯水池について調べていると当時のことを詳しく記した
記事が見つかりました。

水道の需要の高まりに応えるべく貯水池を増設することになり
候補にあがった場所は牧山浄水場の南東側でした。


“ 容量約三萬立米の貯水池兼沈澄池 ”
貯水池が満水になってすぐに決潰したとのこと。

原因についての記載もありました。

地盤が盛土であったこと
鐵管のに引入口から漏水していたこと
が主要因であるとされています。

更に調べると、事故に至る経過を記した記録が見つかりました。


貯水池が完成して湛水を開始した直後
山の下にあった旭硝子様の敷地内で漏水が確認されています。

最初に発見したのは旭硝子の敷地内で確認されているので
社員の方が見つけられたのかと思います。


連絡を受けた水道局はすぐ対応して貯水位を下げて行ったところ
貯水池全部を空にする前に漏水が止まりました。

何が原因かの調査が行われ、漏水している箇所のすぐ内側
鉱滓煉瓦の継目に亀裂が発見されました。

多分ここが漏水の原因であろうという事で此の亀裂を修繕し
再度、貯水を開始しました。


再貯水を始めて20日近く経過した時に突然、貯水池が決壊して
旭硝子様の敷地で大変なことが起きたのだそうです。
当日の天候は無関係であろうという事も記されています。

山のてっぺんの貯水池です。
沢筋や谷に土堰堤を設けて作るような貯水池ではなく
プールみたいな物であったと考えられます。

貯水池を形成する材料と地盤と部材に脆弱な部分があったことで
決壊したのでしょう。


ということで
ずっと気になっていた北九州市の牧山貯水池と牧山浄水場跡地を見てきました。

日本のダム決壊事故についてのデータベースに載っていない
牧山貯水池の決壊事故は、ダムというよりプール状の貯水池
水槽の事故であったために載っていなかったんだなという事がわかり
個人的にとてもすっきりしました。

私が見たい場所に的確に連れて行ってくださった北九州のダム好き様
貴重な資料をお示しくださった北九州市上下水道局の皆様
ありがとうございました。