迫地区の西谷橋

2021/6/21 更新


これは2012年に奈良県の川上村で大滝ダムのダム湖の横を通る
R169を南へ進んでいる時の写真です。

目の前には頑丈な仮設橋。
右側の斜面にはむき出しの山肌が見えています。


2011年9月の紀伊半島大水害で
奈良県、和歌山県、三重県に甚大な被害が出ました。

主要国道も大変な被害でしたが
ライフラインの復旧は目を見張るほどの速さで進められました。


この地図には土砂災害(人的被害あり) 土砂災害(人的被害なし)
通行止め 孤立集落 が記されています。


川上村の役場がある、この迫地区でも山が落ちてきて
ここにあった国道と橋を大滝ダムのダム湖に落としてしまいました。


2013年に通った時の写真です。
まだ斜面を安定させる工事は途中で痛々しい山肌です。


斜面の対策工事も大事ですが何といっても主要国道である
R169の復旧と落ちた橋の架橋が最も必要とされていました。

大滝ダムの右岸には県道が整備されていてそちらは無事だったので
発災後、迅速にう回路が確保されたことは素晴らしいことでした。
ライフラインは何本あっても良いのです。


現地にあった災害復旧事業の説明看板です。


ここにあったのは西谷橋という橋でした。
2011年9月4日17:20ごろに発生した土石流により落橋しました。


斜面がごっそり無くなっていますので
とりあえず仮設橋でライフラインを復活させていました。

現地資料によると下路式ワーレントラス橋だそうです。

この応急組立橋、IHI様のトライアスかなと思うんですが不明。


ホントにすぐ架けられる鉄橋の仕事っぷりは素晴らしいです。
永久橋じゃないから可能なフットワークの軽さ。
災害時、ほんとに頼もしい仮設橋です。
しかもカッコいいし。

こういう大変な災害に備えてばらした状態で
地方整備局が所有しているのです。
災害が発生してから注文するのでは遅いので。

そしてそしてこの応急組立橋は
なんと部材を現地に運搬して仮組立
架設、庄板設置をわずか11日で完成させたという
凄いものでした。

詳しくは近畿地方整備局のこちらの資料をご覧ください。

あちこちの災害復旧時に活躍しているので
目にしたことがある方も多いかと思います。


旧西谷橋とR169がうす紫色で描かれているルートです。
赤色のルートが新しく掛けられる橋と接続するR169の位置になります。

◆ ◆

2015年4月新しい橋が架かり通行できるようになりました。


橋は架かってとても便利になりましたが斜面の工事はずっと続いていました。


洪水期になる前の水位が高めの大滝ダム湖を見ながら迫地区にやってきました。


新しい橋の上をてくてく歩きます。
走り良い道路になったことで車もバイクもかっ飛んでこられますので
注意して端っこを歩く。


崩壊地が見えてきました。


昔の西谷橋が架かっていたところです。


落ちてきた山が国道と橋を襲いました。
ひとたまりもなく橋は吹き飛び、今も橋の残骸は見つかっていません。


崩壊地の冠頂に近い部分に広く施行された枠工です。
うねうねと山肌を覆っています。


崩壊地で一番大事なのは水の道を造ること。
しっかりした布団籠が積み上げられて流路が
崩壊地の左右に二筋設けられています。


雨のたびに活躍しているに違いありません。


最大幅は220mにもなる崩壊地です。
端から端まで並べられたフレキシブルコンテナパック。
そして養生マットのような緑のシート。


新しく架けられた西谷橋のつないだR169。
橋のすぐ向こうに川上村の役場が見えています。


「新西谷橋」という名前が付きました。


大水害から10年経ちました。

人の暮らしはたくさんの人が頑張ってくれたおかげで
元通りになろうとしています。

でも山は元のようになるにはとても時間かかかります。

R168、R169
トンネルがどんどん開通していく横で
とても海までが近くなった、災害に強く安全になった国道の横で
今も続いている崩壊地の対策工事を見てきたレポートでした。