起伏堰の事 その2

起伏ゲートは小さいものであればとても身近にあったりします。

水田の横の用水路に板一枚を立てるだけで水位を調節できる取水堰でも
起伏ゲートはよく採用されています。


通勤路で見かけるだけでも数か所あったので撮ってみました
これは2.0×0.6mの自動転倒ゲートです。
設定した水位に到達したら自動的にゲートが倒れます。


この写真は全開状態です。
開閉方式は手動ワイヤー式。
巻き上げ機にハンドルを差し込んで手動でくるくるしたらワイヤーが巻きあがって扉体が起立します。


これはかなりの水量を流している常願寺川に近い水路にある取水ゲート。
これだけの水量があったらマイクロ水力発電できそうです。
さすが富山。

しかし、大河川でこれをするという事は角材なり扉体(に該当する板や角材)に
それぞれ、水圧に負けない変形しないだけの剛性が必要になります。

そして同時に命がけで作業しなくてはならないという作業環境も問題でした。


コンパクトで便利な現在の色々な起伏堰が登場する前
大河川で水位を調節するためにそれまで主流だった方式というと
琵琶湖の南郷洗い堰に代表される角落とし式です。


頑丈な角材をこのピアの溝に落とし込んで水位を調節するというもの。
人力でこれをしていたために物凄い時間と人手が必要でした。

詳しい資料はアクア琵琶で展示されています。



場所は変わってここは大阪の枚方市。
交通量の多いR170の横にある為、パーキングを行きすぎてしまいやすい淀川資料館です。

ここには淀川の防衛に欠かせない枚方基準点について調べにやってきました。


で、またまた目的と違うものに目移りしています。

沢山並ぶ資料の中で目がとまったのはこの扉体模型。


ここにも起伏堰が!
大正3年(1914)に完成した洪水時に転倒する機能を備えた長柄起伏堰です。
長柄起伏堰については毛馬排水機場見学の時に写真などを見ていましたが
模型があったとは知りませんでした。


起伏堰の倒し方模式図。


倒し方説明。


扉体の下にひっかけられる取っ手みたいな金具が取り付けられていて
そこに鍵竿を引っ掛けてよいしょっと持ち上げるんですが
水圧が半端なくかかっているのでウインチ使わないと絶対無理無理。

作業船は踏んばる為に上流の長柄橋の橋脚にロープでつないで作業していたという事で
濁流の中、これで一つ一つの扉を倒していくのは物凄い労力だったと思います。

そして扉は83枚とか・・・気の遠くなる作業ですね。
これは明治、大正時代の最先端だったはず。


資料館管理をしておられる国土交通省の方に許可を頂き
模型を動かしてみました。

カメラ片手に動かしながら撮ったらぶれた・・・。

この「支柱の溝を外して転倒させる」というあたりは
模型を見ないと何とも説明しがたいのですが
凄くよくできた仕組なんです。

うう。今度はその部分を連写で撮影させてもらえないか相談してみたい。

長柄起伏堰の仕組を知ると、やはり
大河津分水の自在堰というのは本当に画期的だったんだなと感じます。