上平井水門
2023/5/1 更新
令和5年、梅があちこちで咲きはじめる頃に
IHIインフラシステム様の堺工場を見学させて頂きました。
工場内見学時に着用する作業装束一式♪♪
これに加えて頑丈な安全靴も着用して製造現場を見せて頂きました。
写真撮影は当然、禁止ですから必死でお聞きした内容を覚える。
サーニットゲート、あまり使われていないと思いこんでいたけど
面で水密するときには当然、有利なのであちこちで使用されているとか
最近、オールステンレスで塗装なしのゲートの発注がきていることとか
(高額!!! イニシャルコスト超高額!!!)
省合金二相ステンレス鋼のお話とか
一生懸命、覚えようとしたけど脳みそ、経年劣化しているのでなかなか大変。
以前、建設技術展近畿でNIPPON STEEL様のブースで見たパネルでは
二相ステンレス鋼というのは高耐食性(孔が開きにくい)と高強度を備えて
汽水域に適した鋼と淡水域に適した鋼の良いところ取りで造られた
とても高価な材料です。
金属の組織は一般的なステンレスだとオーステナイト組織というもので
できているのですがフェライト組織というものを混ぜることで
高耐食性と強度が増すのだとか。
なのでオーステナイト相とフェライト相で二相ステンレス鋼になります。
二相ステンレスというのは高性能な素材ですが溶接が難しい高強度材でもありました。
近年、溶接性が改善されて高強度を必要とする溶接構造物の主役級に躍り出た
スター級の鋼なのだとか♪
高性能なので部材をコンパクトにして軽量化もできるし
逆に高強度なので大型の扉体も作成可能になるし、イニシャルコストを高くしても
長い目で見ると元は取れるという考え方で
あちこちの水門でこれを使った製品がオーダーされているのだとか♪
アホなので貴重なお話の全部を覚えられなかったのですが
たくさんいただいた勉強のキーワードの中で
今度、帝都に行ったら会いに行こうと決めたのが
荒川の横にある中川に設けられた上平井水門でした。
◆ ◆
新小岩駅を降りて中川の堤防を目指す途中にあった新小岩公園。
噴水ゲートの文字に何も考えずに撮ってしまった。
駅から200mくらい歩くとすぐに中川の堤防につきました。
上平井水門は少し上流です。1kmくらいかな。
中川を上る船が水門に向かって行きます。
青信号のゲートに向かっています。
ゲートは常時開で出水時に閉まる運用の防潮水門だそうです。
一番働くのは台風襲来時の高潮に対する運転だと思いますが
地震や津波発生が予想される時にも動くそうです。
こちらは中川と荒川の間に設けられた中川水門。
到着しました。
A.P.+4.9mなので背の高い船は航行がちょっと難しい。
径間は十分すぎる広さで27.6m。
先ほど通っていった船の航走波でフェンスの横でも波被り状態。
この時、水位が高かったのかはちょっと確認不足で不明です。
波被りでたむろする水鳥達。
こちらは耐震工事の説明板です。
上平井水門は荒川と平行して流れる中川と綾瀬川の合流部に設けられた水門です。
江戸川区に代表される帝都の東部低地帯は海抜が東京湾海面より低いので
水門や堤防で守り、排水機場が24時間365日稼働してドライランドをつくり出して
人の暮らしが確保されている場所です。
上平井水門は昭和44年に設置されました。
東日本大震災で津波が発生した時にも大活躍したこの上平井水門ですが
耐震化は防災インフラには必須。
こちらの左岸側に地盤改良がおこなわれたそうです。
上平井水門。
下流側御近影。
興味深い扉体なのですが下流側からはそれが見えない。
とりあえず車に気をつけて歩道がないので路側帯に張り付くように移動。
上流側見えるところないかとじりじり移動してこのポイントに。
見えた♪
日本で唯一のパイプフィーレンディールの扉体♪
全景を撮れる所、扉体の詳細を見られるところはどこかと
探しながら上流にかかる上平井橋に移動しました。
橋の袂からはこんな感じで水門が見えます。
上流面全景です。
なんでも、上平井水門はオールステンレス製の水門としては
これまで扉体面積最大のレコードホルダーであった
和歌山県下津港の琴ノ浦水門(2019年完成)を上回って
現在、日本一なのだそうです。
SUS323Lのオールステンレスの扉体面積も凄いけど
やっぱりこのフィーレンディール構造に目がいきますね。
扉体寸法は、純径間30.0m 有効高11.0m
重量は2150tもあるそうです。
国内で唯一のパイプフィーレンディール構造ローラーゲート。
フィーレンディール構造とは
“トラス構造をピン接合でなく剛接合にしたラーメン構造”です。
斜めに走る鋼材がないのです。
梯子を横倒しにしたような、とよく表現されます。
八ッ場ダムの直下の橋がフィーレンディール橋として
最近、一躍有名になりました。
帝都では永代橋のすぐ近くにある豊海橋が有名かもしれません。
関西だったら京都の保津峡橋がフィーレンディール橋です。
高潮から津波からこの上流を守るために
これだけの強靱さが求められた証が
このフィーレンディール構造だと思うので。
ということで、非常に珍しい構造の水門ということで
上平井水門を見学してきました。
基礎情報を教えて頂き、勉強の機会をくださったIHIインフラシステム様
ありがとうございました。