亀の瀬地すべり 見学 その1

2018/7/1 更新


奈良県と大阪府の県境近く。
一級河川大和川の狭窄部に古くから地すべりと闘ってきた場所があります。

亀の瀬地すべりです。

日本が誇る砂防技術を目いっぱい詰め込んである事と
平日であれば現場見学できるという事で
以前から、見学したいな〜と思っていました。


新緑が美しい季節、突然、ダム日和のtakane様のツイートで
亀の瀬地すべりの見学会が土曜日に開催されるという情報が飛び込んできました。


ふだんは平日しか開催されていない見学会です。
takane様が奈良にお越しになるという事で
慌ててスケジュールを見ましたら運よくお休みだったので
その場で申し込みをしてしまいました。



当日、JR王寺駅に電車でやってきました。


王寺駅でまず下車して、駅周辺を散策します。


するとすぐに、こんなシールが張り付けられた柱が目に入りました。


近畿地方で戦後最大の被害を出した昭和57年台風10号。
T8210です。

T8210災でここ、王子町の市街地は大変な浸水被害を受けたのです。


さらに上を見ると
大和川が氾濫した場合に浸水が予想される高さが記されていました。
2.9m

この場所で、駅のすぐ横で
高さ2.9mまで浸水するなんて怖すぎます。


大和川がどんな川なのか。
こちらの近畿地方整備局大和川河川事務所様のページで整備計画概要がみられます。
大和川の特性も分かりやすく図入りで示されていますし
T8210で浸水した王寺町の写真も載っています。

T8210災の後、大和川はずっと治水安全度を上げるために
様々な対策工事が行われてきました。
特に頑張って進めてこられたのは
河川の水が流れるスペース、容積を増やすことができる河道掘削です。
洪水を安全に流下させる力が高まるのです。


昨年やってきたT1721。
超大型台風でした。
そして今まで永らく破られていなかった
T8210の記録を抜くほどの雨を降らせました。

しかしT8210の時のような大きな被害は出ませんでした。
河道掘削事業の効果がばっちり効果を示してくれたのです。


これはT1721襲来時のNHKのwebニュース記事です。
使われている写真は川岸、堤防ギリギリ
橋の袂まで水位が上がった大和川。


これが川の防災情報で見られる平時の同じ地点のCCTVカメラです。


カメラの位置は王寺駅の北東で大和川を渡る昭和橋の右岸側でした。
今回、この場所はこれだけ水位が上がりましたが被害は出ていません。
3kmほど下流で両岸に溢水が発生しています。
これが夜中に、ニュースで氾濫したとの報が流れたので
もうこれ以上水位上がらないでとお祈りするしかできませんでした。

T8210災では奈良市の隣、大和郡山市でも浸水被害が出ているのです。
昔から水に浸かりやすいエリアには
洪水時に家の周囲に土堤に角材を落とし込むことで
家を守る仕組みが古くから伝わっており、T8210災でもその効果を示しましたが
すぐ近くに公営の団地がつくられておりそちらでは浸水被害が大きく
団地住民が周囲の集落の土堤のせいで水位が上がっていると思いこんで
にらみ合いになり一触即発の事態にまで発展したと
当時の新聞には大きく取り上げられていました。

なので奈良北部は災害が少ない事で有名ですが
時々災害は発生しています。
日本国内で災害が来ない場所などありませんから。


JR王寺駅と近鉄王寺駅。
直角に別の鉄道会社の改札が並んでいて
知らない人なら間違えそう。


駅前を歩くとあちこちの電信柱にT8210浸水レベルが記されています。
この場所は2.2m。


こちらは2.9mでした。